
タバコとシャボン玉
第3章 偶然
公園には、ブランコとすべり台、砂場と、ちょっとした休憩場があった。
彼はその休憩所に腰掛けると、ポケットから何かを取り出した。
剛「見てろよ」
彼が手に持っていたのは、シャボン玉セットだった。小学生が使うような、あの。
彼は得意げに、ストロー状の棒を筒の中にシャカシャカとつけると、大きく息を吸って、フーッと吐き出した。
すると、棒の先から、大小様々なシャボン玉が飛び出した。
夕日で真っ赤なシャボン玉だった。
剛「幻想的だよな。まるで、宇宙を見てるみたいだ」
彼はそう言うと、また沢山の粒を空中に創り出した。そして、シャボン玉と宇宙について語り始めた。
───本当に幻想的な光景だった。
まるで、これまで住んでいた場所から、違うところに来たみたいに。ただのシャボン玉なのに・・・
普通に生活していて見るものとは違う。
私にとっては、彼の言うとおり、確かに『いいもの』だった────
剛「ってなわけで、そもそもあんなに重いはずの物体が浮いてて────」
彼は夢中になって、宇宙とシャボン玉の話をしていた。無邪気に、少年のようにワクワクしながら話す姿は、少し羨ましいとすら感じた。
気がつけば、もう空は紫色になっていた。
