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タバコとシャボン玉

第2章 出会い

美咲「な、何しているんですか?」


その男は、この雨の中、傘も刺さずに、橋の下に向かって糸を垂らしていた。


美咲「あ、あの・・・」

男「しっ!静かに!」


男はこちらを見ることなく、小さな声でそう言った。


男「今いい物をみせてやるよ」


男はそう言うと、さらに身を乗り出して、橋の下の水たまりで釣りをしていた。


美咲「あの、風邪・・・引きますよ?」


私がそう言ったと同時に、急に大声をあげたかと思えば、男は橋の上で飛び跳ねながら、満面の笑みを浮かべていた。

男「見ろよーこれ!!」


男が手にしていたのは、筆。
よく見ると、手は絵の具で汚れていた。



男「いやーよかった。あっちの展望台で絵を描こうとしたんだけど、筆がなくなってね!探しにきたらここに落ちてるのを見つけたんだよ」


男はビショビショになりながら、学校とは反対方向の山を指差してそう言った。山には、見晴らしの良い展望台がある。


私は呆気にとられ、雨も、木の音も、宿題も忘れ、男を見つめていた・・・




──季節は梅雨


彼と私は、こうして出会ってしまった・・・

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