王子様のプロポーズ〜クロード編〜
第3章 フィリップ城へようこそ
立ち去ろうとしたユリは足を止め振り返る。
クロード:「ウィル様・・」
クロードは少し困った様な表情を浮かべる。
ウィル:「クロード彼女は俺が正式に雇ったデザイナーだ。証拠の手紙まであるというのに帰そうとするとはどういうことだ!」
怒りを含みクロードを睨む。
しかしウィル王子の睨みなど怯まないクロード
クロード:「しかし彼女はピエールの下働きになったばかり・・素人同然です。その様な者がスペンサー家のデザイナーになど勤まるとは思えません。」
ウィル:「お前の意見は分かった。だがこれは決定事項だ。彼女は俺の専属デザイナーとして今日から此処に住んで貰う。」
クロード:「はあ・・国王様がお知りになったらどうするおつもりです?」
ウィル:「心配などいらない。彼女はノーブル様のお墨付きだからな。」
クロード:「ノーブル様の?」
以前の6カ国会議の会議室にはクロードは別件で居なかった為ユリの話しは知らない。
クロードは目を丸くし驚く。
クロード:「すみません。貴方はノーブル様のデザイナーもおやりに?」
ユリ:「やってません。ですが作って欲しいと注文は受けてます。」
クロード:「・・・・」
ユリ:「あの・・それで私はどうすれば良いですか?」
クロード:「これは大変失礼致しました。ご案内致します。」
クロードはユリを連れ城内を案内する。
廊下を歩いて行くとある部屋の前に立ち止まりドアを開ける。
ウィル:「入って」
ユリは頷き部屋の中に入る。
クロード:「一度来られて居るので分かっていると思いますが、此処がウィル様の執務室でございます」
ウィル:「僕は大抵この部屋に居るから何か用事がある時は此処に来れば良い」
ユリ:「分かりました」
続いて執務室を出てアトリエに向かう。
部屋を見るともう随分使われて居ないようで奥のミシンは年代を感じさせる。
ユリはその古いミシンが気に入り真っ先に走ってその感触を確かめていた。
まるで純粋な子供の様でウィル王子が微笑む。
ウィル:「気に入ってくれた?」
ユリ:「はい!・・・服職人は他にいらっしゃらないんですか?」
ウィル:「もう随分前から雇って居ない。今は色んなブランドがあるからね」