王子様のプロポーズ〜クロード編〜
第3章 フィリップ城へようこそ
ウィル王子が部屋を出て行き再び作業を開始する。
深夜2時が過ぎてクロードはアトリエを覗く。
流石に部屋に戻って寝ているものと思っていたが薄暗い部屋の中スタンドライトの灯りだけでミシンを動かす影が見える。
クロードは驚き目を見開く。
ユリの懸命に仕事をする姿に胸を打たれつつも毒吐く。
クロード:「全く・・バカな人だ・・」
ボソッと小声で言うが今のユリは作業に集中していて聴こえていない。
クロードはそっと邪魔しない様にドアを閉め去って行った。
翌朝、ユリは作業台にうつ伏せに寝ていた。
そこへクロードが現れ目を見張る。
クロードの目の前にはユリが作った衣裳が6着ズラリと並んでいた。
それも手抜きなど一切無く丁寧に縫われどの衣裳も素人の域を越えていた。
ピエール:「やっぱり日本の職人さんは腕が素晴らしいわよね〜!」
クロード:「!」
いつの間にか真横に立っていたピエールに驚く。
ピエールは幾つかの生地を抱えて立っていた。
ピエール:「これでこの子の腕が本物だって事が分かって頂けたかしら?」
クロード:「ええ・・」
クロードは衣裳を見つめたまま応える。
ピエール:「それなら安心だわ」
ピエールは生地を棚に置くと帰って行った。
ユリ:「ん・・」
クロード:「目が覚めましたか?」
ユリ:「!すみません寝ちゃってました。」
クロード:「いいえ。それより随分無理なペースで作業をしてらしたようで」
ユリ:「そんな事ないです。あ、この生地いつの間に・・」
クロード:「先ほどピエール様が見えて置いて行かれました。」
ユリ:「そうでしたか。後でお礼言っておかないと・・」
そして出来上がった衣裳を見つめるクロードに不安げに聞いてみる。
ユリ:「あの・・どうでしょうか?」
クロード:「腕は確かのようですね。ですがこれとこれはウィル様には少々派手な気がします。」
ユリ:「そうですね・・ちょっと攻めた服もどうかと思いましたけど・・公務で着る服じゃないですよね。直ぐに作り直します。」
そう言いユリはピエールが持って来た生地を広げ徹夜でデザインしたスケッチに色当てし、素早く裁断して行く。