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白衣と天使

第3章 three

雛「あー!!なんでそこやねん!」

今日は久々の休みで、
家で録画してあったサッカーの試合を見ている。

なんだヤキモキするプレーばかりで
試合がいっこうに面白くならない。

つまらなすぎてイライラしながら、
バタン!とソファーに倒れる。

雛「……あかん。暇すぎる。」


休みが久しぶりすぎて
何をしていいのかわからない。

それからも
なんとか、時間を潰してみたものの
全くしっくりこなくて、
結局サッカー観戦もやめてしまい、
何故か病院に来てしまった。


雛「休みちゃうんか、俺。」

自分に自分で突っ込みを入れつつ、
来てしまったのだから行く場所はひとつ。
と、ヤスの部屋へ向かった。

雛「…ヤス?入るで?」

いつものように、声をかけて静かに扉を開けると、
ヤスは、眠っていた。
窓から差す程よい光に照らされるその寝顔は、とても綺麗だった。

ふと、ベッドの片隅に白い封筒が置いてあるのに気付いた。

雛「…ほんまに書いたんかい。」


サンタさんへの手紙。

それは要するに俺への手紙で、
俺には読む権利がある。

ヤスの頭元にあるそれを、
ゆっくりと手に取り、開いてみる。

真っ白な便箋の真ん中には小さく綺麗な字で、

『何もいらない』


と書いてあった。

彼なりの遠慮なのか、本心なのかよくわからない言葉に、困ってしまう。



と、気づかなかったが、下の方にこれまたちっさく続きがあった。



『やから、これからも信ちゃんのそばにいたい。』


その一文を見たあと、
ヤスがパチッと目を覚ました。

俺は、何も言わずにじっとヤスを見つめる。

安「あれ…?信ちゃん今日、休みやろ?なんでおるん…?あ、…それ読んだん?」


俺が手に持っていた便箋を見て、たずねてくるヤスに、こくりと頷くと、
「そっか。」とだけで、
何事もないように話を続けようとするので、
さすがに、止める。

雛「おい、なんやねんこれ。」

安「なにって…そのままやけど?」

雛「そのままて…俺かて、ヤスにずっとそばにおってほしいって思ってるのに、お願い被ってもうてるやん。どうすんねん、これ。」

真顔でそう言う俺に、
ヤスは、少しだけ頬を染めて嬉しそうにクスクス笑いながら、体を起こし、
こう言った。


「じゃぁ、とりあえずキスしとく?」


俺は、その日初めてヤスという、天使に触れた。

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