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白衣と天使

第4章 four

今日はなんだかヤスの元気がない。

ぼーと、空を眺めていたり、
話しかけても、どこか上の空で。


雛「ヤス?ヤス?おい、ヤス!」

安「あっ、わっ、はい!!!」

いつものように、入るで。と一声かけてから扉を開けたのに、
ほんとに、ぼーとしている今日のヤスは、俺が部屋に入ってきたのにも気づかなかったらしい。

何度目かの呼びかけで、やっと俺に気付いたヤスは、目を見開いて、驚いている。

安「あれ、おったんや!ごめんっ!!えっと、…なに?点滴?血圧?」

雛「なんもなくて、来たらあかんのか。」

わざと、不機嫌そうに言う俺に
ヤスは、大きく首を横に振って

安「そんなわけないやん!信ちゃんのこと大好きやねんで?」

なんて、言うから、
俺も怒るに怒れなくなる。

雛「…そうか…」

なんだか妙に甘ったるくなってしまった空気に一人で戸惑う。

そりゃそうだ、6年間抱いていた想いが、急に届いてしまったら、
誰だって腑抜けになるに違いない。
いや…そうだと信じたい。

そわそわしている俺に比べて、ヤスといえば、そんな空気の中ででもどこかぼーとしていて、なんだかヤスじゃないみたいだった。

雛「…おい、どないした?なんか変やぞ。」

安「…んー?んぅ〜。…なんかね、なんでかな?信ちゃんと両思いやって知って嬉しいのに、それと同じくらい、苦しいねん。恋したときのギューって胸が苦しくなるアレとはちゃうくて、なんか…息苦しいねん。」

雛「息苦しい…って、大丈夫か?昨日の検査は、異常なかってんけどな…」

安「ちゃうって!やから、体調の話じゃなくて……なんか、なんか、…申し訳ないって思ってしもて…」

雛「えっ?申し訳ない?」

ヤスの言葉の意味がさっぱりわからなくて、目が点になる。

安「うん。だって…だって、俺、病気なんやもん。信ちゃんといっぱいしたいことあんのに、何一つでけへん。信ちゃんにしてあげたいことも、いっぱいあるのに、何もしてあげられへん。そんなんなのに…信ちゃんが俺のこと好きって…申し訳なくて。」

ヤスはなんだか、自分を責めているみたいだった。

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