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白衣と天使

第4章 four


遠い目をして、悲しく笑うヤスの頭をペシッと軽く叩く。
あ、これ、医者としてはあかんけど…まぁ、ええわな。

雛「お前、めっちゃ失礼なやっちゃな。そんなんなヤスのこと、好きになってしもうてすんませんね。」

安「えっ?いや、信ちゃんが悪いんちゃうんやで?俺、…めっちゃ嬉しいし…」

雛「ほな、ええやん。素直に喜んどきや。俺はお前が好きなんやし、お前は俺のこと好きなんやろ?なんも問題ないやん。それでええやん。」

俺の言葉を聞いたヤスは、そこでやっと我に返ったようで、
嬉し恥ずかしといったように、照れ笑しながら、「そっか。」と、頷いた。

雛「こんななんもない部屋にずーとおるから、考えすぎてしまうだけやって。いらんこと考えそうになったら、俺のこと思い出しとき?ははっ、我ながらキッショいこと言うたわ今。」

そんな冗談を言いつつ、そろそろ仕事戻るわ。と、手を振るヤスににこりと微笑んで、病室から出た。


閉めたばかりの重い重い扉を睨みながら思う。
俺が、ここからヤスを出してあげられる日は、いつ来るのだろうと。

そう思うと、医者なんて肩書きを背負った俺の、無力さを痛感した。

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