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狐の嫁入り

第3章 星降る夜に

「綺麗ね・・・。」

隣にいる月子は、瞳を輝かせ―微笑んで空を見上げる。

「そうだね。夜の星たちは、本当に・・・。」

彼はなぜか哀しげな表情で、空を見上げていた。

「なぜそんなに哀しそうな顔をするの?」

「夜空を見てると、死んだ母さんを思い出すんだ。誰よりも・・・俺に優しかった母さんを。」

月子は穏やかに微笑み、彼の手を握った。

「・・・!!」

ギンは驚いて、彼女の顔を見つめた。

「あなたはここに居るわ、ギン。あなたのお母さんだって、きっと・・・あなたのことを優しく見守ってくれてるわ。」

「わたしにも両親はいないけれど、そう考えていたら・・・不思議ね、強く生きていける気がするの。」

彼女は気丈にも微笑んだ。

「―ありがとう、少し元気が出たよ。」

ギンは微笑んだ。

「よかった・・・。」

「―ギン様・・・!!どこですか・・・!!」

その時―どこからか子供の声が聞こえてきた。


「仲間が呼んでる。今日はもう帰るね・・・月子。」

「ええ、また逢いましょう。」

彼は懐から『何か』を取り出し、彼女に差し出した。

「この指輪・・・君が付けていて。」

それは、見事な銀細工の指輪だった。

―中心に琥珀が埋め込まれた。

「綺麗・・・わたしなんかがもらってしまっていいの?」

「君に付けていてほしいんだ。」

彼は微笑み、彼を呼ぶ子供の方へ駆けて行った。

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