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狐の嫁入り

第4章 父の警告

「ギン、お前・・・また“外”へ行ったのだな?」

ギンは鳥居をくぐって狐たちの世界に戻り、彼の父の屋敷へと戻った彼に―父である長老が言った。

「―父さんには関係ないだろ。」

冷たく突き放すように、ギンが言う。

「失礼するよ、父さん。」

彼は父の横をすり抜けるようにして、部屋を出て行こうする。

「お前が人間の娘と共にいるのを見た者がいるのだぞ・・・!!」

ギンは立ち止る。

―まだ振り返らないままだ。

「―我らの正体を知ったらどうなる?我らを滅ぼそうとするだろう。」

長老はギンの背中に向かって言った。

「月子はそんな女(ひと)じゃない!!」

彼は苛立ち、棘を含んだ声で言った。

「それに・・・その娘が“雪(ゆき)華(か)”だったらどうするのだ?」

―雪(ゆき)華(か)。

それは鬼一族の姫君のことで、妖術を操る一族の生まれの女鬼だ。

「彼女は死んだはずだろ、父さん。」

「いや。絶対に、あやつは生きている。」

「警告は受け入れるよ、父さん。」

彼はそこで言葉を切り、

「でも・・・月子に逢うのはやめない。」

ギンはそう言うと、私室へ戻って行った。

「ギン・・・!!待ちなさい!!」

―呼び止めようとする父の言葉を無視して。

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