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狐の嫁入り

第2章 不思議な出逢い

―その日、月子は幼い妹と共に神社の祭りに来ていた。

「月子姉さん、あれやりたい・・・!!」

雪乃は金魚すくいの屋台を指さして言った。

「ええ、いいわよ。」

彼女は屋台を開いている男にいくらか払うと、和紙を張ったお玉を妹に渡した。

「やってみて、雪乃。」

「うん!!」

彼女はにっ、と笑うと―金魚すくいを始めようと屋台へ行った。

笑顔で手を振って見送ると、彼女の耳にふと―

リンッ・・・―

という鈴を鳴らすような音が掠めた。

「鈴の音・・・?どこから・・・。」

彼女はふらふらと、鈴の音がする方へ歩いて行く。

―どうやら、千本鳥居の向こう側から聞こえてきているらしかった。

近くまで行ってみると鳥居に人が寄りかかっていて、そのひとは銀色の髪に夕焼けのような黄色い瞳をもつ―青年だった。

「こんばんは。」

彼は微笑んで、月子に挨拶した。

「こんばんは・・・あの、あなたもここのお祭りに?」

彼女も微笑み返して、問いかけた。

「あぁ・・・俺は違うよ。」

「君の名前は・・・?」

「―月子っていうわ。あなたは・・・?」

彼女は微笑み―妹に視線を送る。

「あの子は?」

「妹の雪乃よ、もっとも・・・血の繋がりはないけれど。」

月子は哀しげに目を伏せた。

「なぜそんなに哀しげな顔をするの?」

「ぁ・・・ごめんなさい、何でもないの。」

「―月子姉さん・・・!!どこ・・・?」

「あの子が呼んでるわ・・・もう行くわね。」

彼女はそう言って、雪乃のいる方へ歩き出した。

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