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第3章 想い
俺は雅紀の実家を後にして
自分の実家に帰った。
「翔、おかえり。」
「ただいま」
「随分久しぶりね。元気だった?」
「うん、楽しかったよ」
ぼーっとしている母と他愛もない会話をする。
けど、
「翔…、なんかあったでしょ?」
俺の雰囲気には気づいたそうだ。
「やっぱわかるんだね笑」
「あんたがわかりやすすぎるだけよ」
俺はお母さんに雅紀のことを聞いてみることにした。
「あのさ、さっき…雅紀と会ったんだ。たまたま…。公園にいてさ…」
「それで?」
「話しかけたんだ。けど、前の雅紀とは違って…」
お母さんは静かに聞いている。
「それで携帯が雅紀と繋がらなかったってことを言ったら"携帯切られたんだ"って。」
「それに…雅紀が実家の前通ったらわかるよっていうから通ったら…ポストの中が借用書ばっかりで」
けど俺にはどうすることも出来ない。
「お母さんね、知ってたの。家がご近所っていうのもあるけどね…あの中華料理店は破産したのよ」
「なんで…?あんなに繁盛してたのに?」
「繁盛してたからよ。雅紀くんのお父さん…病気で倒れちゃって…それからはもう…」
悲しそうに話す母親の顔を見ると
真剣そのもので。
けど、俺は信じたくない気持ちの方が大きかった。