テキストサイズ

ドラクエ短編集(クリアリ)

第2章 今だけは…

「もちろんですとも」

ざわつく心の内を悟られぬよう、努めて平静を装いながら答える。

「ありがとう!」

アリーナ様は本当に嬉しそうに笑った。

この笑顔を守る為ならば、私は何だってするだろう。
それがたとえ神に背くことだとしても。



「そうと決まれば早速出発ね!」

「お待ち下され!」

早速駆け出そうとしたアリーナ様をブライ様が慌てて引き留める。

「姫様、城をこのままにしておくことはできませぬぞ。よからぬ者が侵入せぬよう、しかと鍵をかけておかねば」






ブライ様の提案で、手分けをして全ての部屋、全ての扉をきちんと閉めた頃にはすっかり日も落ちていた。

いつもなら灯りのともる窓は固く閉ざされ、城は眠ったように夜の闇にその姿を沈めていた。

こうして改めて見ると、どれほど大変なことが起きているかがひしひしと感じられた。
それはアリーナ様も同じようで、しんとして闇に佇む城を複雑な表情で見つめていた。

「今夜はもう遅い。サランで一泊して明日の朝出発ということでどうですかな?」

ブライ様の言葉に、アリーナ様は城を見つめたまま「そうね」と頷いた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ