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ドラクエ短編集(クリアリ)

第2章 今だけは…

あまりにも可愛らしい申し出に、胸がきゅんと締め付けられる。

「わかりました」

いつもと変わらぬ声色であるかに細心の注意を払いながら答えた。



「アリーナ様、『大丈夫』ですよ」

「…うん…」

「お父上はもちろん、お城の皆さんも『大丈夫』です」

「うん……」

アリーナ様は私の胸元にしがみついたまま、小さく返事を返す。
法衣の胸に顔を埋めるようにしているので、その表情は見えない。





でも。



アリーナ様の肩が震えて、押し殺した嗚咽がかすかに聞こえてきた。

「アリーナ様…」

私は小さい子をあやすように、彼女の背中を軽くぽんぽんと叩いた。一瞬びくりと体を震わせたアリーナ様は、「クリフトぉ…」と私の名前を呼ぶと、声を押し殺しながらも泣きじゃくり始めた。



ああ。

こんなにも、この方は我慢してきたのだ。

本当は不安でたまらないのに、私たちには気丈な笑顔を見せて。



上に立つ者が不安な顔を見せたら、皆が不安になる。だから、上に立つ者は不安を見せてはならない。
それが『主君』としての自分の役目だと、アリーナ様は考えていたのだろう。特に、城の皆が行方不明になってしまった今、サントハイムで一番の権限をもっているのはアリーナ様になる。

この小さな体で『王家』を支えようとしている。

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