ドラクエ短編集(クリアリ)
第2章 今だけは…
エンドールの武道会での勝利の喜びもつかの間、サントハイムの城に起きた異変を命がけで伝えてくれた兵士に手を合わせ、ブライ様のルーラで急ぎ戻ったその場で私たちが目にしたものは。
「…ねぇ…なによ、これ…」
呆然と立ち尽くすアリーナ様。
長年住み慣れた城の、この異様な姿に言葉が出ないのが、痛いほどによくわかる。
城そのものには特に大きな損害があるわけではない。
どっしりとした重厚そうな城壁も、きれいに積まれた屋根のレンガも、いつもと何ら変わりはない。
…ただ。
いつもと違うのは、侵入者に備え…というよりむしろアリーナ様の脱走を防ぐために城門に立っていた兵士が見当たらないこと。
いつもと違うのは、いつも通りの美味しそうな匂いがたちのぼる厨房から、料理の美味しさをさらに引き立てる料理長たちの笑い声が聞こえてこないこと。
いつもと違うのは、アリーナ様が帰ると「王女ならもう少ししとやかにせんか」と厳しい口調とはうらはらに愛しさ全開の笑顔で迎えてくれる王様…そう、つまりアリーナ様のお父上がいないこと…
「…ねぇ…なによ、これ…」
呆然と立ち尽くすアリーナ様。
長年住み慣れた城の、この異様な姿に言葉が出ないのが、痛いほどによくわかる。
城そのものには特に大きな損害があるわけではない。
どっしりとした重厚そうな城壁も、きれいに積まれた屋根のレンガも、いつもと何ら変わりはない。
…ただ。
いつもと違うのは、侵入者に備え…というよりむしろアリーナ様の脱走を防ぐために城門に立っていた兵士が見当たらないこと。
いつもと違うのは、いつも通りの美味しそうな匂いがたちのぼる厨房から、料理の美味しさをさらに引き立てる料理長たちの笑い声が聞こえてこないこと。
いつもと違うのは、アリーナ様が帰ると「王女ならもう少ししとやかにせんか」と厳しい口調とはうらはらに愛しさ全開の笑顔で迎えてくれる王様…そう、つまりアリーナ様のお父上がいないこと…