ドラクエ短編集(クリアリ)
第2章 今だけは…
「みんな………一体どうなってるの…?」
いつも気丈なアリーナ様の語尾が震える。
「わかりませぬ…何かに襲われたような形跡も見当たりませぬな…」
ブライ様が白い髭を撫でながら周りを見渡して言う。
ブライ様の言う通り、どこにも戦いの痕はない。それどころか、厨房の料理は作りかけで、スープの下ごしらえだろう、大きな鍋が火にかけられたままだ。
これはまるで、『神隠し』だ。
『神隠し』は今までにも何度か話を聞いたことがあった。でもそれは一人、二人の話で、こんなふうに城の全員がまるごと『神隠し』にあうなんて聞いたことがない。
もしかして、と思う。
王様には未来を予知する力がある。
以前も「闇の帝王が甦って世界を破壊していた」という夢を見た、という話をしていた。
…そして、その時は不思議な力によって王様は声を奪われた。
それが魔族の仕業だとしたら……
最悪の結果を想像してしまった自分を嫌悪しながらも、その可能性が否定できないことに思わず拳を握りしめた。
いつも気丈なアリーナ様の語尾が震える。
「わかりませぬ…何かに襲われたような形跡も見当たりませぬな…」
ブライ様が白い髭を撫でながら周りを見渡して言う。
ブライ様の言う通り、どこにも戦いの痕はない。それどころか、厨房の料理は作りかけで、スープの下ごしらえだろう、大きな鍋が火にかけられたままだ。
これはまるで、『神隠し』だ。
『神隠し』は今までにも何度か話を聞いたことがあった。でもそれは一人、二人の話で、こんなふうに城の全員がまるごと『神隠し』にあうなんて聞いたことがない。
もしかして、と思う。
王様には未来を予知する力がある。
以前も「闇の帝王が甦って世界を破壊していた」という夢を見た、という話をしていた。
…そして、その時は不思議な力によって王様は声を奪われた。
それが魔族の仕業だとしたら……
最悪の結果を想像してしまった自分を嫌悪しながらも、その可能性が否定できないことに思わず拳を握りしめた。