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雪の日の空に

第8章 愛した人は…

「全部説明になってねぇよ。」

塩沢さんは口元に持っていったグラスを傾けるとフッと笑った。

「あっ、笑った顔。」

「え?」

ふと思い立って口から出た言葉に塩沢さんが不思議そうにこちらを見る。

「塩沢さんは本当の笑顔って感じがします。佐月さんは、本当には笑ってないような…。本心から笑ってない気がするんです。」

私の思い違いかも知れない。

ただ、なんとなくそう感じただけ。

「聞けば聞くほど、佐月とは幸せになれる気がしないんだけど。どこがいいわけ?」

怪訝そうな顔で塩沢さんはため息をついた。

思えば、佐月さんを気になり始めたのは

初めて彼を見かけた橋でのことだった。

不思議な人だと思ったし、何をそんなに悲しそうに見ているのか、ただそれが気になって仕方がなかった。

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