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雪の日の空に

第8章 愛した人は…

「佐月は、絶対に自分が守らなければいけない大事な命を守りきれなかったんだよ。」

「…いのち、ですか?」

佐月さんの想っている人はこの世にいないという事だろうか。

あの橋の上での悲しい表情は、その亡くなった"ゆきさん"を想っての事だったんだ…。

最愛の人の死を経験した事の無い私には、どれだけそれが重いのか分からない。

「でも、高校を卒業して直ぐの事だから、だいぶ前だし。今更佐月がそんなに思い詰める事でも無いと思うんだけどな。」

さらりと言ってのける塩沢さん。

なんだか少し言い方に冷たさを感じる。

塩沢さんにとっての大切な人の死は、そんな簡単に受け入れられるものだろうか。

「亡くなったんですか?その人…。」

「ん?…あぁ、そうだな。でも、あれは佐月の責任じゃ無い。不幸な事故だった。」

塩沢さんは、その人に会ったことがないのだろうか。

思い入れが無さそうな口調から、あまり接点が有りそうには聞こえない。

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