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雪の日の空に

第8章 愛した人は…

泣く姿を見たくないと言った佐月さん。

そうか。

そうだったんだ。

佐月さんが、私と付き合うフリをする理由はきっとそこにあったんだ。

やっぱり優しいな…。

佐月さんの顔を見上げる。

私以上に辛そうな、心配そうな顔をしている佐月さん。

今は私が佐月さんにこの顔をさせている。

側にいて支えになりたいと思っていたのに、私は何をしているんだ。

佐月さんの頬に右手を添える。

ごめんなさい、こんな顔をさせて…。

顔をそっと佐月さんに近ずけ、自ら唇を佐月さんのそれと合わせた。

軽く触れるだけの短いキス。

「心配しないでください。私、大丈夫です。」

にこりと笑うと、佐月さんの口元も少し弧を描いた。

そのままもう一度抱きしめられる。

佐月さん…やっぱり好きだな。

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