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雪の日の空に

第3章 似た顔

営業の人が4階に降りてくる用事なんてほとんどない。

塩沢さんが4階の給湯室に偶然寄る確率なんて、無いに等しいのに、こんなところまで何をしに来たのだろう。

考えれば考えるほど私に会いに来たとしか思えず、顔が熱くなる。

勘違いさせたのは私だ。

こんな風に、思考をかき乱されて、夜も眠れないなんて、業務に支障をきたす。

次に会ったら誤解を解かなくては。

そう心に決めた。

それから数日、会う機会がないかと思う時に限って塩沢さんは姿を表さず、時間だけが過ぎてゆく。

このまま、あの出来事がただの私の自惚れであって欲しい。

「あ…。」

ここ最近、塩沢さんの事で頭がいっぱいで、あの人の事を考えて居なかった。

もう二度と会えないと思っていただけに、驚きがつい口に出た。

次に会ったら話しかけようと思っていたのにも関わらず、やっぱりそんな勇気は私にはないのだ。

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