
雪の日の空に
第1章 日常
美咲と別れ、駅に向かう。
季節もうすぐ春だというのに、今にも泣き出しそうな空の色に、寒さはまだ続くのだと実感する。
「ゆき。」
不意に呼ばれた自分の名前にふと顔をあげた。
橋に手をかけ、川を見ていたのか顔だけこちらを向いている。
見たことのない顔。
「あの…。」
どちら様?と言いかけた所で、その人は切なげに笑い、口を開いた。
「すみません、人違いでした。」
そして、また川に向けたその顔をそっと上にあげた。
止まっていた足を再び進め、ふとその横顏を盗み見ると、空と同じく泣き出しそうな顔。
不思議な人。
私と同じ名前の人と間違えるなんて。
あの人のゆきさんはきっと彼にとって大切な人なのだろう。
その日私は珍しくその出来事がやけに気になってうまく眠りにつけなかった。
季節もうすぐ春だというのに、今にも泣き出しそうな空の色に、寒さはまだ続くのだと実感する。
「ゆき。」
不意に呼ばれた自分の名前にふと顔をあげた。
橋に手をかけ、川を見ていたのか顔だけこちらを向いている。
見たことのない顔。
「あの…。」
どちら様?と言いかけた所で、その人は切なげに笑い、口を開いた。
「すみません、人違いでした。」
そして、また川に向けたその顔をそっと上にあげた。
止まっていた足を再び進め、ふとその横顏を盗み見ると、空と同じく泣き出しそうな顔。
不思議な人。
私と同じ名前の人と間違えるなんて。
あの人のゆきさんはきっと彼にとって大切な人なのだろう。
その日私は珍しくその出来事がやけに気になってうまく眠りにつけなかった。
