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雪の日の空に

第5章 再スタート

佐月さんの手が髪に触れる。

仕事だと分かっていても、鏡越しに彼の顔が見えると緊張する。

髪を乾かしてくれたあの日は、佐月さんの表情なんて分からなかったから、見えてしまう今日は特にそうなのかもしれない。

「どうするか決めてる?」

鏡越しに目が合い、どきりとする。

「いえ…。お任せしてもいいですか?」

「ん、了解。」

佐月さんの手で、切られてゆく髪。

器用に手際よく、なんの迷いも無いかの様にハサミを動かす。

その真剣な表情は、とても綺麗で、鏡ごしからでも吸い込まれてしまうのではないかと思うくらいだ。

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