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雪の日の空に

第2章 変化

手を伸ばしても届かない、暗くて高い夜の空。

漆黒の髪と瞳。

今にもその空の色に飲みこまれてしまいそうな儚く切ない後ろ姿。

あなたはいったい誰…。




瞼を開くと、見慣れた天井が見える。

夢と気付くまでに時間はかからなかった。

とうとう夢にまであの人が出てくるとなると、私はどうかしてしまったのだろうか。

いつもの様に家を出て、いつもあの人が立っているその場所を通る。

通勤中のサラリーマンや、学生とはすれ違うが、この時間に彼の姿はない。

当たり前だ、彼を見るのは辺りが暗くなってから。

名前も歳も何もかも知らない人の事をこんなにも考えた事があっただろうか。

知らないということが、こんなにももどかしいなんて思ったのも初めてだ。

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