《番犬女》は俺のもの
第8章 手段は選ばない
残った零はマットの上で長い脚をぶらぶらと動かしていた。
そして茜が体育館を飛び出したごろに、彼は倉庫を出ていく。
ガチャン──
電気を消した倉庫は真っ暗で何も見えない。
「…ハァ…ハァ、帰ったか…」
零が立ち去ったのを確認して倒れていたひとりの男が顔をあげた。
──男は気絶したふりをしていたのだ。
彼は暗闇のなか、手探りで自分のスマホを荷物から引っ張りだし、電話をかける。
「──…ハァ、オイっ、今からそっちに行くみたいだ……。あ?それが…っ、男じゃなくて女だ! 」
通話の相手は先ほどと同じようだ。
「…ああ、黒髪の女だ……たぶんそっ」
「──誰と話してるの?」
「──…!!」
耳に当てていたスマホがいつの間にか抜き取られていた。
気が付かなかった──
まだ奴は倉庫を出ていなかったなんて。