《番犬女》は俺のもの
第8章 手段は選ばない
──────
自転車に乗った茜は、目的の場所へあっという間に到着していた。
♪♪⌒♪―♪
「ハァ…、やっぱりここだったか…」
この曲……
それは午後4時を過ぎると決まって流れ出す商店街の音楽だった。
誰が作ったのか知らないが、聴くと家に帰りたくなる昔懐かしのこのメロディーを、彼女は頭の片隅で覚えていたようだ。
しかし残念ながら、この商店街はもう古い。
近くに次々と大手のショッピングモールが建ち並ぶにつれて、人足は減る一方だ。
昔のよしみで買いに来るお年寄り
犬の散歩に通りかかる大人
そして──
家に帰らずバカ騒ぎする不良たち。
夕方を過ぎれば、商店街をうろつくのは決まって同じメンツだった。