《番犬女》は俺のもの
第8章 手段は選ばない
茜は商店街の入り口に自転車を止めた。
邪魔にならないように端に寄せて置き去る。
耳を済ませて歩く茜
そして彼女は目星をつけていたまさにその場所で立ち止まった。
「…タバコ」
おとといの朝の清掃で掃除した。
しかし同じところに同じように…タバコの吸い殻が散乱している。
茜は足下から目線をあげた。
タバコが捨て置かれているのは、いまや空き家となったふたつの建物にはさまれた狭い路地の入り口だ。
「──…」
迷うことなく路地に入る…。
すると商店街の音楽が、物理的な理由で微かにしか聴こえなくなった。
音楽が小さくなると
変わりに別の音が聴こえやすくなるわけで──
“……上…! ”
それは右手のビルの二階
そこから数人の男の声が間違いなく聴こえた。
茜はいったん表に戻り、古びたビルの冷たいコンクリート階段を上っていった。