《番犬女》は俺のもの
第8章 手段は選ばない
「…誰だよお前っ…あいつはどうした」
「──篠田は来ないぞ」
「ああ? なんだと…ッ!?」
「…だからその子を解放してやってくれないか」
小さくなって震えていた人質の女は、茜の登場に気が付いたようだ。
“ 大丈夫、すぐに助ける… ”
茜は心のなかで言葉をかける。
…それから、ゆっくりと近づいていった。
「‥‥‥」
堂々と部屋に入り
堂々と部屋の奥へ進んでいく
目の前を通りすぎる彼女を不良たちはあっけらかんと眺めていた。
「返してもらう…」
「──!? ちょっと待て!」
奥へ進んだ茜が座った彼女に手を差しのべようとすると、前に立ち塞がっていた男がさすがに止めた。
近付いてきた茜の肩を突き返す。
「お前…本気で言ってんじゃないだろうな?このままこの女を帰してやるわけないだろ!」
「…何故だ。お前等の狙いは篠田だろう…」
「確かにッ…そうだけど…!!」
「だったら──」
次の瞬間──
「きゃああ!」
茜の前に立ち塞がっていた男の脇腹に強烈な蹴りがはいった
「女を巻き込むんじゃねえよ……!!」
茜の言葉を聞く間もなく
男はよろけて倒れる
「てめっ…、──うッッ…!!!」
横の男には、回し蹴り
あと三人──!
「…あっ…ッ…あっ」
人質の女は怯えていたがかまっている余裕はない。
茜は彼女の腕をつかんで強引に立たせた。
「すまないとにかくビルを出ろ!ドアに向かって走ってくれ……っ、
────‥‥‥」
しかしどうしたことか
茜はその瞬間に固まってしまった
........
「‥あ、‥‥茜ちゃん‥‥!!」
「──…」
……嘘だろう?