《番犬女》は俺のもの
第8章 手段は選ばない
なんで来たんだ…
「はぁ?お前…」
「なんだよ、ちゃんと男も来たじゃんか」
もともと開けっ放しの扉だったので、零が声を発するまで誰も彼の登場に気が付かなかったようだ。
不良の興味は、その瞬間で零に移る。
「…お前が腰抜けじゃなくて安心した。ちゃんと自分の女は自分で助けに来なきゃあなあ?」
「間に合ってよかったな!? 危うくお前の代わりに大事な女が泣き叫ぶところだ」
五人のうちの三人が、零のいる部屋の入り口へ進んでいった。
もちろん彼等は女を人質として使うつもりなわけで
零が抵抗する道をふさいだつもりなわけで。
あとはどうやって、この生意気な男を痛め付けてやろうか……
それだけが頭にあるわけで。
「…来るなと言った筈だ…篠田」
零は茜に問い詰められる。
「──…うん、言われたよ」
返事をした彼は茜に微笑んだ。