《番犬女》は俺のもの
第9章 おしおきの時間
「…よっと」
転がり落ちてきた段ボールを邪魔なので放り投げる。
「茜さん、ここにブレザーのがあるけど」
「そ、そうか…悪いな…っ」
埃で汚れた手をパンパンとはたき、座ったままボタンを差し出す零に向き直った茜。
彼女は立ったまま彼からそれを受け取った。
「──…」
ボタンを差し出した
包帯でぐるぐる巻きの右手──
茜はそのまま、その右手に軽く触れる
《君は刃物で切られたことがあるかい…》
「……篠田」
「…何?」
「お前は刃物で切られたことがあるのか」
「……。(イマ、切られたばっかり)」
・・・・・
(フリーズ・・・)
「っ…そうじゃなくて!! 今までにってことだよ!」
「だからこの右手…」
「茶化すのはやめろ!」
「……茜さん? 」
茜は零の右手に手を添えたまま、その場に膝から崩れ落ちた。