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《番犬女》は俺のもの

第10章 見舞い


彼が紙袋を受けとると、茜は自分の鞄からもうひとつ取り出した。

「……ほら」

「何?」

「花崎さんからだ」


茜が梗子から預かってきたのは、ここ三日の授業のノートの写しだった。

直接届けてきちんと改めて礼をしたいと言った梗子だけれど…

“ 篠田みたいなのに花崎さんは危険だ ”

そう思ってこれも一緒に預かってきた。



「ありがとう」

紙袋を横の靴箱の上において、零はその写しを受け取った。



「…花崎さんから貰えるなんてなかなか無いことなんだから感謝しろよ。──…じゃあな」

「えっ 帰るの?」

「…もう用がないからな」


そっこうで廊下に出た茜の後ろ姿を慌てて呼び止める。

しかし茜は顔だけ振り向かせて、つれない返事をするだけだ…。



「…まだ、肝心の茜さんから何も貰ってないんだけど…」

「……私から?」

「見舞いに来てくれたんじゃないの?」


──そう、彼女が見舞いに来たのだとばかり思っていた零は

渡すものだけ渡してさっさと帰ろうとする彼女に驚いていた。


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