《番犬女》は俺のもの
第14章 水も滴るイイ女
季節は晩秋なわけで、そんなシャツ一枚で寒くないのかと聞きたいところだが…茜は無視を選択した。
脱いだジャージを鞄に突っ込みながら歩き出す。
「…今日は一段と冷たいね。負けたのがそんなに悔しかった?」
「……!!」
行く手を阻んだのは零の腕。
彼女の顔の前を通って壁に手をついてきた。
「…っ…そういうお前は勝って嬉しかったのか」
「…、さぁ…それほど」
棘のある声で茜が聞き返すと、零は曖昧な言葉で返してきた。
“ それはそうだろうな… ”
勝つも負けるも気分次第
そんな試合をしたところで、一喜一憂などできないだろう。
「こんなお遊びじゃあ、楽しくもないし」
「…嫌味だな…!」
「嬉しくないし楽しくないし…。今日は俺、ずっとピリピリしてたかなー」
「…は?」
ピリピリ?篠田が?
意外な感想が彼の口から出てきた。