《番犬女》は俺のもの
第3章 天敵現る
「早くしてくれ…朝礼が始まるだろう」
「……」
「質問の意味がわからなかったか?
外の不良どもの狙いはお前なのかと聞いている」
「…イヤ、だね」
「──?」
零は両手をポケットに入れた状態で、腰を曲げて上半身を倒し彼女に顔を近づけた。
「初対面の女子に《お前》呼ばわりされて、俺はふかーく傷付きました」
「──…」
「だから今はどんな質問にも答えられないよ」
「…なるほど」
「…じゃあそういうことで」
上半身を起こした零は教室に戻ろうとする。
「茜ちゃんっ」
「…っ」
その時ちょうど、登校してきた梗子が横から女生徒に声をかけた。
「──…」
零は黙って梗子を横目で見た。
そしてドアを開けて中に戻る。
「1組に用なの?…あ、もしかしてこの前わたしが話したことで…」
「何でもないよ、おはよう花崎さん」
「?…おはよう」
茜は梗子に挨拶をすませると自分のクラスに戻っていった。