《番犬女》は俺のもの
第16章 新婚生活 開始!?
それに気づいたものの、まんまとはめられた後。
「……っ」
返事に困る茜の手から弁当を受け取り、零は鶏肉をもうひとつ口にした。
そして彼女に返してあげる。
「ごちそーさま、これ決定事項ね♪」
いやいやいや
「勝手に決めるな!礼なんていらないと言ってるだろう」
「そんなの俺が納得できないよ。じゃあ放課後楽しみにしといて」
独断かよ
「…今日の放課後は…っ、お前とは帰れない」
このままだと勝手に話を進められるので、茜はきっぱりと断ることにした。
しかし零の方も簡単には諦めない。
「なんで?」
「今日は帰宅後に…、っ…少し、用がある」
「茜さん、塾も習い事もしてないよね?何の用事?誰かと遊ぶつもり?」
「遊びではないっ」
零がなかなか納得しないが、放課後に用があるのは本当なのだ。だがその内容は彼に話すわけにいかなかった。
「そっかぁ…、どんな用事か、教えてくれないんだね…」
「篠田には関係ない。…っいや、そんな大した用でもないんだ(汗) おい!なんだよその顔は」
デートの誘いをかわされた零は、何の用事か話そうとしない彼女を寂しげな目で見つめている。
“ ますます面倒くさい奴になったな…っ ”
何も悪いことはしていないのに
焦りに似た罪悪感が茜を困らせてしまうのだった。