《番犬女》は俺のもの
第3章 天敵現る
──あの事件とは、この初夏に起こったことだ。
それは水泳の授業中
更衣室に置いてあった梗子の下着が盗まれた。
盗んだ犯人は、二月ほど前から梗子をストーカーしていた3年の男子生徒だった。
その男は、世間一般のストーカーというイメージとはほど遠い…女生徒に人気のバスケ部のエース
整った顔立ちで体格もいい
そんな男だった。
『下着泥棒が先輩って噂は本当かしら?』
『えー!? そんなわけなくない? 先輩にかぎってそんなキモオタみたいなことする筈ないよぉ』
『だよねぇ』
『──…』
学校も、梗子自身も、事件が大きくなることを望んではいなかったから…
その事件の真相はうやむやにされようとしていたのだ。