《番犬女》は俺のもの
第18章 おちゃらけプリンスの正体
ジャージを穿いた零は、上に何も着ていない。
「ここにも大馬鹿野郎が…」
茜は呆れて頭を抱えた。
「おい…!! 篠田…」
「おはよー、茜さん」
「ハァ…いちおう理由を聞いてやろうか?何故、服を着ずに廊下に出てくるんだ」
まともな理由があるもんなら言ってみろといった口調。
「ジャージ忘れちゃった」
対して、零に反省の色はない。
「忘れた?なら制服を脱いだのは何故だ!?」
「脱いでから気付いた」
「……っ」
「だいじょーぶだよ、今から保健室に借りにいくから」
返す言葉もないということを察したのか、零は掌をひらひらと見せながら前を通りすぎる。
「…ちょっと待て!」
そんな彼に茜が後ろから叫んだ。
「なに?」
「なんかよくわからんが…っ、その、ただ漏れてるフェロモンを仕舞ってから行け!犠牲者が増える」
美術から戻ってきた4組の女子生徒がちょうどここではちあわせ、視界に飛び込んできた零の身体にクラクラきている。
さっきの猿たちより、こいつの方がよほどたちが悪い。
「──…ムリだよ、出ちゃうもん」
零はそんな彼女たちには目もくれず
茜にウインクを贈ってその場からいなくなった。
───