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《番犬女》は俺のもの

第19章 警戒


この時の彼の様子は不機嫌というよりかムッとしていると表すのが正しいだろう。

零はもともと、興味のないことにエネルギーを使うのが苦手だし、嫌いだ。


《尾行するうえで重要なのは、集中力》


だからといって直視はできない。

何気なく辺りを見渡しながら、それでもターゲットの些細な行動の変化に注意をはらわなければいけないわけで…

それはますます零の苛々を増幅させる。




─スッ


ハルクが鞄からスマホを取り出した。



彼は横の電源ボタンを押したあと、画面の一点に軽く触れる──


そしてスマホをもとの場所に戻してしまった。





「……」


いまハルクは何処かへ電話したか?
メールを送ったのか?

ちがう、彼は画面を一度押しただけだ。


こんな距離からでさえ、零の驚異的な視力はスマホをすべる指の動きを逃さず確認していた。


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