《番犬女》は俺のもの
第21章 秘め事
そういえば
「──篠田!お前何やってんだよ…!!」
電柱の固さが響く左拳を、ふるふると振りながら…茜は何もせず突っ立っている零のところに戻っていった。
…別に
何もせず突っ立っていた
ことを怒っているんじゃなくて
「……話してただけだよ」
「私が来なかったら何する気だった? 」
「別に…。格下クンの格下ぐあいを事細かに説明して嫌み言って馬鹿にして 陰湿な噂を学校中にながそうかなーって作戦たてながら…──」
「茶化す、な!」
いじめっ子キャラをいつの間にかものにしてる。
そういうのはタイミングを選んでから発動しろってのに…!!
「──喧嘩しようと身構えてたろ、わかるんだよ…雰囲気で」
喧嘩の前に訪れる沈黙は…
実体験しているからこそ空気で感じる。
「……」
とくに
ちょうど茜の位置からは、その瞬間の零の目がばっちりと見えていた。
普段の篠田ではない…
冷静なようで研ぎ澄まされた炎を──。