テキストサイズ

《番犬女》は俺のもの

第22章 茜サンは、強いよね




だが、俯く彼の顔を茜の側からは少しだけ見ることができた。



その瞬間に零が浮かべていた微笑みほど

哀しい表情を茜は知らなかった。




グツ. . グツ.. . .



沸騰する湯に浸かりながらパスタが踊り

しだいに柔らかくなると
くたりと湯の内にその頭を隠した。




茜は、なんと声をかけるべきか迷った。




それは誘拐事件の衝撃的な結末のせいだけではない。



それを《小さな事件》と言い切る零の

これ以上ないほどの皮肉に身体の芯が震えていたからだ。




ストーリーメニュー

TOPTOPへ