《番犬女》は俺のもの
第22章 茜サンは、強いよね
「こうしてると俺と茜さん、付き合ってるみたい」
素直な茜の対応に零は嬉しそうだ。
カランと皿にフォークを戻して
その手で零は彼女の頬に触れる。
「俺はさ」
「…?」
「あの日からずっと、父を憎んでいた」
───…
『 我が国の誇りをかけ…
私は決して、犯罪に屈しない 』
テレビ画面の向こうで
記者たちに言う父の姿は力強かった。
国民は身代金の支払いを拒否した父を──彼の態度を称賛した。
コメンテーターは、これでこその英国海軍だと物知顔で解説した。
お父様は立派な軍人ですねと
皆が俺に言ってくるんだ。
狂ってると思わないか?
俺はもう…何も考えることができなくなった。