《番犬女》は俺のもの
第24章 クリスマスを君と…
「…ハァ」
赤くなった顔を俯いて隠す梗子は、呼吸をゆっくり整える。
「ありがとうございます…離してくれて」
「NO way…」
礼を言う彼女に、ハルクは自身の額に手を添えて溜め息をついた。
「…ナンだよ…っ、キミは」
調子狂う……ッ
「親の仕事柄、英国の方とはよくお会いしていますから…あなただって例外ではないでしょう?」
「どこにそんな確信が?」
「──…、図書室でも助けてもらいました」
パタパタパタと
座ったままスカートを叩いて皺を伸ばす。
そして小さく咳払い。
「おふざけはそこまでにして下さい。…ハルクくんも、座って」
襲われる直前だったのに…
育ちの良さが滲み出る言葉遣いで、梗子は隣の席を示して勧めた。
「──…梗子ちゃん?お持ちしましたよ~」
ちょうどそのタイミングで先程の老婆が紅茶をふたつ運んできた。
箱に並んだかぼちゃのクッキーを横に添えて──。
「すごぉい!これ手作りなの?」
「ほほっ、そうで御座います」
「いただきますね、ありがとう」
クッキーを前に梗子の声が、その瞬間、僅かだが年相応の…女子高生のものに変わったと
横で見ていたハルクは思った。