《番犬女》は俺のもの
第28章 ──…逃げるな
───
「…そろそろ帰ろうか」
先に立ち上がったのは零の方だ。
「 俺 の 家 、に」
「…っ…わかってる」
駅まで来たのだから、零のマンションまでもう少しだ。
不意をついたプレゼントで茜の機嫌はいくぶん良かったから、彼女は文句を言わずベンチから離れた。
よく見たら…彼ら以外にも、駅にはそれらしきカップルが。
これから何処に向かうのかは知らないが。
「──…ところでさー、ずっと気になってたんだけど」
「……?」
「それってわざと?」
わざと?何の事──
「…そうやって震えてるの」
零の言葉に、茜の歩みが止まった。
“ 震えている…? ”
「…あ」
本当だった。
なんとなく腕を前で組んで、身体を小さくして彼女は震えていた。