《番犬女》は俺のもの
第28章 ──…逃げるな
基本的に寒さに強い茜。
「…?」
何故、今日に限ってこんなに寒い?
「なるほどこれも…、会長サンのアドバイスね」
「──はぁ?」
そうして、茜は気が付いた。
この服……
昼間は何も感じなかったが夜になると…ざっくりと襟があいているせいで肩が直接、冷たい空気に触れてしまう。
この白ニットを選んだのは梗子だった。
そういえばあの時、梗子は一緒にコートも買おうとしていたけれど…──。
『 コート?いいよそんなもの着たことないし…。それに値段が(汗) ──うん、いらない 』
値札の金額にびびった茜は、買うのをやめた。
『うーん、でも夜は寒いだろうし…』
『平気だよ』
『そうね、その時は、篠田くんがきっと…♪』
思い返してみると
あの時の梗子は、悪戯っぽく微笑んでいたような。