《番犬女》は俺のもの
第28章 ──…逃げるな
「…だが、まずはお前からだ にいちゃん」
スッ──と、ナイフの先が向きを変えた。
ゆっくりと零に近づいてゆく
その靴音が、狭い路地に響く。
「女の方はあとで大事に遊んでやる」
「……」
「そうだな…、せっかく上は裸なんだ。ついでに下も脱いどくか?」
ナイフを持った男は信じられない事を口にした。
さらには愉快げな合いの手が、茜の後ろから次々にあがる。
「お前っ、悪趣味だな!」
「男のはだかぁ?うわ、興味ねー」
「いいじゃんそれ、面白そうだろ」
背後の声が盛り上がれば盛り上がるほど
前を見つめる茜の目は鋭くなった。
《 面倒臭いだろうか 》
さきほど言ったその言葉……
撤回しても、いいだろうか。