《番犬女》は俺のもの
第28章 ──…逃げるな
「帰るぞ篠田…。お 前 の 家に」
「そうだね」
脱げた片方のパンプスを拾って履き直した茜と
やっと上着を身に付けた零。
“ 服が少し汚れた… ”
パタ、パタ、パタ
軽く煤を払ったあとで、二人はそこを立ち去った。
───
「…どうぞお嬢さん」
零がドアを開けると、目の前にはおきまりのただっ広い部屋。
相変わらず家具がない…。
「先にシャワー浴びてきなよ」
「……信用ならない」
「そう? まぁ大丈夫なんじゃないかな。まだ」
「まだ──ね、わかった…」
凍えた身体をシャワーで温めたらいいと、提案してくる零が怪しい。
ぜっっったいに覗くなよと
そう念を押して、茜は脱衣場に入った。