《番犬女》は俺のもの
第28章 ──…逃げるな
「怪我してなくてよかった」
「…!?」
「……さっきはゴメンね、茜さん」
右の拳を優しくさすって静かに囁く。
いきなり何を言い出すかと思えば、零は手を離して脱衣場から出ようとした。
…大人しく出ていくなんて意外だった
「…ッ 待て、何の言い逃げだ」
茜は咄嗟にバスタオルを手にした。
──ヒュッ
「──…ン! ぐ」
「あ、悪い(汗)」
彼女が操るバスタオルはまるで鞭のようにして、出ていこうとする零の背後から首に巻き付いて引き留めた。
タオルに首を絞められながら振り返った零。
「…苦しッ、なに?」
「とぼけるなよ。丁度いいから次いでに聞いてやる…っ」
茜は自分の身体を隠すために、タオルを持ったまま腕を前で組み、そして彼を見上げた。