《番犬女》は俺のもの
第29章 ハダカの心
「…いつの刺し傷なんだ」
「九年前だよ」
「──…なるほどな」
傷を見つけた瞬間、なんとなく予想はついていた。
つまりこれは、九年前の誘拐事件の…。
......
『 計画性のない犯行はすぐに足をつかれ、三日後には発見されたよ。──…突入してきた大勢の軍人を見てパニックに陥った犯人は、人質にナイフを突き付けた 』
『 …で、あっという間に射殺 』
溜め息もうまく出せない。
「本当に、重要なところをすっ飛ばすよな」
なにが…《小さな事件》
強がるなよ。
「トラウマになるほど怖かったのか」
そんな状況に巡りあったことがない茜には、想像はできても実感できない恐怖だろう。
「──…そうじゃ、ない」
「…!?」
「そうじゃないんだ、茜さん」