《番犬女》は俺のもの
第29章 ハダカの心
悲しいわけじゃない…!
「辛かったんだな…」
「……!!」
どうして、そんなに、綺麗な涙を流せるの
「俺の話を聞いて、泣いてるの…?」
「…悪いかッ」
零は、余分なことを話さない
だから《余計》に……
余計にその辛さが伝わる。
「お前は悪くない、篠田、──…九年前の事件は、篠田のせいじゃない…!」
ヘラヘラして、フワフワしながら
誰にも知られないまま、自分を責めて生きていた篠田が
やっとそれを打ち明けたんだ。
「大丈夫だ。私はちゃんと受け止められる」
「……っ」
「私は強い、だからもう…ッ 誤魔化さなくていい」
「茜さんが泣いてるの…始めた、見た…」
溢れる雫が、美しくて
綺麗であればあるほど、頼もしくて
その力強さが──
「そっかー、…そうだよね」
零はぎゅっと彼女を抱き締めた。
こうやったら、泣き止んでくれるかな。
「茜さんは強いもん、ね」
それに、強いだけじゃない
こんなに優しい人なんだよね。