《番犬女》は俺のもの
第31章 茜の反撃
二人がいるのは花崎家の広々キッチン。
そこで何をしているかと言うと…
Valentine Day のチョコレート作りだ。
「でも、篠田くんをきゅんとさせるんでしょう?」
「…きゅん? …ぃや、驚かしたいだけで…っ」
「同じことじゃないかなぁ」
「そうか…? な?」
板チョコをきざむ茜は、梗子に丸め込まれていた。
《篠田を驚かす》
確かにそれが今回の目的だ。
まさかこの私が、とあるクリスチャンの命日に、チョコレート会社の陰謀に乗っかって手作りプレゼントを贈るなど…夢にも思っていないだろうから
ここで、明日
あいつに一泡ふかせてやるよ。
「…、ふ…」
端から少しずつ削るようにきざみ続けて、細長く削った後、向きを変えてさらに細かく…。
作業に没頭しつつ、自分が不気味に笑っているなど気が付かない茜だった。