無料で楽しめるちょっと大人のケータイ小説

ひとあし先にチョコレートをきざみ終わっていた梗子は、茜とは違い湯煎でそれをとかしていた。

…かと思えば、湯煎からおろして温度計を突っ込んでいる。


“ 何だろうか…あれは ”


「これはテンパリング、舌触りをよくするのよ」

「…テンパリ…？」


同じチョコレートでも、上級者編を作っているようだった。



「…それはそうと、花崎さんは…その、いつそれを渡すんだ？」

「わたしは…っ、学校終わりに食事に誘われてるから…その時かな」



バレンタインデーの夜に梗子を食事に誘った男。

なんでもその相手は、正式に花崎家に挨拶をした上で…梗子にお付き合いを申し出てきたという。


“ 堂々と申し込んできたあたり、評価してやっても構わないが…。まだ私はお前を信用した訳ではないからな ”


茜は二人を黙って見守ると決めたのだった。