《番犬女》は俺のもの
第6章 おさめた拳 ( コブシ )
下駄箱で二人は靴を履き替える。
「ちょっと待ってよ」
「──なんだ?」
階段に足をかけた茜は呼び止められた。
「どこ行くの」
「教室だ」
「何しに?」
「……授業」
なに当たり前のこと聞いてるんだ
茜は怪しむような目線をこの理解不可能な茶髪男に向けながら、次は何を言い出す気かと待っていた。
「……」
「授業受ける前に やることがあるでしょ?」
「…な、何をだ…」
なんだ…?
急にこいつ、声の雰囲気を変えたな
いや…声だけじゃない。
一段上に立つ茜と
彼の目線はほぼ同じ高さで──
いつの間にか二人の顔は近かった。
「──…っ」
「…顔、赤いよ……?」
「…は…!?」
零は近距離で見つめたまま
彼女の頬に手を伸ばす。