《番犬女》は俺のもの
第6章 おさめた拳 ( コブシ )
零は立ち上がると、冷蔵庫周辺をごそごそと漁りだした。
そしてかごからアイスバッグを持ち出して氷を入れる。
「はい、これで冷やして」
「……っ」
アイスバッグを腫れた頬に押し当てられる。
とてつもなく冷たい…
けれど、茜はそれを言葉にはしなかった。
「…ほら、自分で持ちな」
「わかっている…!」
冷たいのくらい余裕で我慢しないと、なんだかこの状況の自分が幼く思えてしまうのだ。
「…痛みはどうなの? 」
「べつにそれほどでもない…」
「あんな殴りかたされたんだから、やせ我慢なんてするもんじゃないよ」
「──…」
“なんだこの男は……”
茜にはこの状況が、この扱いが慣れなかった。
このやりとりも含め
なんだか居心地が悪い。